2026/07/03 21:13



火と藁の器、その工房へ


2026年1月、恋い焦がれていたブラックポタリーの工房を訪ねた。

この器との出会いと買い付けまでの経緯は、ぜひ商品ページのバイイング日記「火と藁の器」を読んでいただけたらと思う。
https://www.kalah.jp/items/139494255


今回は、その工房についてもう少し書いてみたい。

工房の主は、インド北東部・ロンピ村(Longpi Village)出身の職人。
村では古くから、自家消費のための器づくりが受け継がれてきた。
彼は故郷で作陶を続けるなか、この器で生計を立てるため村を離れた。
器が売れるのは都市部。故郷から作品を運んで販売するのは簡単ではなく、工房ごと郊外へ移したそうだ。

工房は住宅街の一角にある。
見つけるまで少し苦労した。
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時に約束していたものの、本人はなかなか現れない。
飛行機の時間も迫っていたので、少し気が気ではなかった。

あとから聞けば、普段は夜遅くまで制作しているため、仕事は午後から始めることが多いらしい。
インドらしい時間の流れである。

ようやく案内してもらった工房は、思っていたよりずっと小さかった。
八畳くらいだろうか。

隣のさらに小さな部屋では、お弟子さんが寝泊まりしていたらしい。
そこに人がいるとはまったく気づかず、教えられて初めて存在を知った。

気配を消す才能があるようだ。

冒頭の写真にある道具を使い、器は手捻りと叩きで形づくられていた。
一方で、同じサイズのマグカップなどは石膏型を使って成形している。
村に伝わる技法と現代の技術を組み合わせる。それが彼なりのやり方だった。

材料は故郷から運んでいる。
配合は約半分が粘土、もう半分が風化した蛇紋石(サーペンティナイト)。

作陶の工程は実にシンプルだ。

・手捻りで成形し、約5日乾燥。
・削り出し。
・滑らかな石で表面を磨く。あの独特の艶は、この工程から生まれる。
・さらに23日乾燥。
・焼成。

ここまで、およそ2週間。




何より驚いたのは、その焼き方だった。


工房の外の砂地に器と薪を並べ、焚き火のように火を入れていく。
窯ではない。
野焼きだった。
それだけで、あの完成度の器が生まれていることに驚いた。
さらに23時間焼いたあと、器を藁の中へ入れる。
あの独特の黒は、この工程から生まれている。





さらに、籐巻きも彼自身が考案したオリジナルだという。

その話を聞いた瞬間、7年ほど前に手に入れ、
大切に使い続けてきたあのマグカップも、彼の作品だったのだとわかった。
最初の出会いから七年余り。


ようやく、この場所まで辿り着くことができた。